NASAのケリー飛行士が回答した
「宇宙ステーション暮らし10か月だけど何か質問ある?」
からの(とっても個人的な)抜粋です。
Q いつも腕組んでるのはなぜ
重力がないから、腕が自然に両脇に垂れない。
体の前になんとなく浮いているのはきまりが悪いので組んでいる。
Q 宇宙に長くいると起こる、地上では想像できないことは
足のうらの硬い角質がなくなって、赤ん坊のように柔らかくなる。
逆に足の甲は硬くなる。
無重力でフットレールに足を引っ掛けるときによく使うので。
非常に多くの変化があって、ここでは伝えきれない。
目にも変化がある。地上に戻ってからのリハビリは、
おそらく以前6か月滞在したときと同じ。
Q 宇宙で眠るのはどう?背中には良さそう
実際は地上より難しい。
眠る時の姿勢も起きている時の姿勢も同じだから。
地上で一日働いたあとで横になる休息感がない。
あとは機械の低いノイズが安眠の妨げになるので、
寝袋に入るときは耳栓をしている。
宇宙ではGMTを使って、朝6時に起床、10時に就寝と決めている。
もともと長く眠るタイプではなくて、
ここ20年は8時間連続で寝たことはないと思う。
夢は宇宙のこともあれば地上のこともある。
Q 普通にしている時、
無重力だと体になにか影響ある?地上より目が大きく開くとか。
体のどこにも圧力がかからない。どこにも触れていないけれど、
何かからぶら下がっているような気がすることもある。
目を閉じて想像すれば、
どこかから落ちているようなゾクゾクする感覚にもなれる。
実際に地球の回りを落ち続けているのだが。
Q 心臓や循環器系への影響は?
長期間の宇宙旅行が循環器系に与える影響を研究している。
微小重力がわたしの体にどう影響するかの観察が大きな部分。
血圧は低くなるようだ。重力に逆らって血を上げる必要がないため。
Q 宇宙や宇宙飛行について、世間一般が一番大きく誤解していることは?
宇宙飛行士のわれわれがそう見せていることもあって、
宇宙計画は簡単なことだと思っている人が多いと思う。
人間が滞在する宇宙ステーションを15年間も維持するような
ミッションにどれほどの労力が必要か、
一般の人は分かっていないだろう。
こうしたことは、ほんとうに大勢の勤勉な人々がいて実現している。
Q (一年の滞在を終えて)地球に戻ってきたとき、
昔とは変わることをひとつ挙げるとしたら?
自然にもっと感謝する
Q 意見の対立や口論になったことは?原因は?
自分では口論になったことはない。
いくつか目撃はした。内容は仕事について。
Q 宇宙服はどれくらい重い?
ここではとても軽い。地上なら約100kg。
友人知人との関係を維持するのはやはり簡単ではないけれど、
連絡には良い手段がある。地上に戻ったら、
環境の変化に慣れる期間が必要だろう。
Q この仕事をしていていちばん気味の悪い体験は?
主にトイレ関係。最近、尿と酸の混ざった何リットルもある
液体の球を掃除するはめになった。
酸を混ぜてあるのは尿の成分が配管に損害を与えて詰まらせないため。
Q 一年滞在ミッションを終えたあと、今度は二年頼むと言われたら?
月か火星への飛行ならばもちろん受ける。
火星飛行に関わりたいと思っている。助言は荷物を軽くすること。
Q ネット接続は
ネット接続はビデオ通話できる程度には良好。
ダイヤルアップみたいだけど、もっと良いときもある。
Q 宇宙(ステーション)の匂いは?
場所による。制汗剤のようだったり、ゴミのようだったり。
ハッチを開ける時の「宇宙の匂い」は、
私には金属が焼けたような匂いに感じる。
Q 孤独や不安を感じることは?もうそうなら、どうやってそんな気分と戦ってますか。
孤独も不安も感じることはない。ここ六週間、
ステーションの米国側でただ一人の
米国人宇宙飛行士として過ごしているけれど問題はない。
ただ地上から非公開の通信があったときは、
たいてい何か良くない内容なので少し不安を感じる。
Q 地球を見下ろすとき、高さや距離感を感じるか?
雲を見るとき、雲の高さを考えると、
いま自分が本当に高い場所にいると感じる。
宇宙にいる感覚はあるが、怖いとは思わない。
船外活動には非常に高い集中力が必要なので、
途中で高さや怖さを感じることはない。
Q くしゃみは?
地上でもここでも手で覆う。
そうしないと別のモジュールまで飛んでゆくかもしれない。
Q 長期滞在の限界は?止めたくなる?
理由による。理由があるならもっと長期間でも大丈夫だが、
ただ長期滞在だけが目的なら、止めて家に帰るというだろう。
Q 無重力の生活で一番楽しみなのは
睡眠、地球の写真を撮ること、
一日の仕事を満足して終えること。
Q 船外活動はどんな気分
宇宙服というミニ宇宙船のなかで、
死から数センチだけ隔てているのは多少シュールな気分がする。
Q 宇宙から見る地球で一番きれいなのは
宇宙から見る地球で一番好きな場所はたぶんバハマ。
海の鮮やかな青さ、色の変化とコントラストが絶景。
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『バズは火星に戻りたい』/
アポロ飛行士ユージン・サーナン インタビュー
【付録】ちゃんと星々が映っております