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青色LED『日亜化学工業社長の主張』/ 日経ものづくり2004年4月号
メモです。






人は、日々よりよくするために考えます。

それは、人を伸ばすことでもあります。



その結果として、尊敬・感謝されます。



そう、互いに礼節を保ち生き活かされているのです。



社会のシステムとして
これらはとても大切なことだと思う私です。










ーーーーーーーーー

日亜化学工業社長の小川英治氏
訴訟騒動の真実を今こそ明らかにする

 これまで誰に何を言われても黙ってきました。日亜化学工業は,
ものづくりの会社。クライアントにより良い製品を届けることが仕事であり,
それを一途に貫いていくことこそ,当社にとって重要なことだと
信じていたからです。

 そのため,中村修二氏とその弁護士の方(訴訟代理人弁護士の升永英俊氏)
が,各メディアや本などで一方的に自分たちに都合の良い発言をしても,
それに対して会社として何か言い返すというようなことはしませんでした。
そうした言い合いなど,ものづくりの会社にとっては何の意味もありません。
それより,少しでも良い製品を作ってクライアントにきちんと
届けることを貫けば,きっと私たちのことを認めてもらえる。
それで十分だと思ってきたのです。

 日亜化学工業は徳島という地方にある企業で,
広報体制も整っていませんでしたし,マスコミへの接し方が
よく分からなかったということも事実としてありました。

 当社は全くうそなどついていませんから,黙っていても,
専門家の方なら真実を分かってもらえると信じていました。
裁判官の方なら正しい判決をしてくれると思っていたのです。ところが,
意に反して「200億円」という巨額の対価の支払いを東京地裁から
命じられて驚きました。

 そこでやっと悟ったのです。黙っていては本当のことは世間には
伝わらないということに。そこで,当社のものづくりに対する
まじめな姿勢をきっと理解してくれるであろう「日経ものづくり」に対して,
まずは話をしようと思ったのです。


アニールが鍵
 まず主張したいのは,青色LEDの開発の経緯です。日亜化学工業では,
1989年から青色LEDの開発をスタートさせました。そのとき先行していた,
当時名古屋大学教授だった赤崎勇氏などの論文を検証する実験から始めました。
サファイアの下地の上にGaN(窒化ガリウム)の良質な単結晶膜を
世界で初めて作ったのが赤崎氏。これが高輝度青色LEDを作る際の基本的な
結晶膜になるのです。ここに応用化技術を加えて,
青色LEDの量産にこぎ着けることが,当社にとっての目標でした。

 つまり当社は,先行する「公知の技術」を学習して,これを基点に
開発をスタートさせることにしました。既に存在する技術とはいえ,
日亜化学工業にはそのリソースがなかったからです。
そこに着手したのが中村氏でした。赤崎氏の成膜の方法は
開示されていませんでしたが,結果として中村氏が2年ぐらいで
赤崎氏が完成させた結晶膜のレベルに追い付いたのです。

 そのために中村氏が開発したのが,「ツーフローMOCVD
(有機金属を使う化学的気相成長法)」を使ったGaNの成膜装置でした。
要は,当社の社員だった中村氏が1990年に出願した特許第2628404号
(404特許)の装置です。これにより,赤崎氏と同水準のGaNの
良質な結晶膜を作製することができました。

 これをもって中村氏は「同装置がなければ(404特許を使わなければ),
低コストかつ高輝度な青色LEDが作れない」と主張するのですが,
それは大きな間違いです。

 当社から言わせれば,中村氏は実用化に向かう研究のための下地を作っただけ。
既に世の中に存在していた,赤崎氏が生み出したものと同じ水準の試料を,
違う方法で作ることができただけなのです。

 量産までこぎ着けるには,この試料を基にさまざまな応用技術を
投入することが必要でした。中でも,量産化に一番貢献した技術が
「アニール」です。アニールとは「焼きなます」という意味で,
こうしないと工業的に青色LEDは作れないのです。

 LEDではpn接合の半導体を作るために,n型の半導体(膜)と
p型の膜とを組み合わせる必要があります。
ところが,GaNはそのままではn型の膜にしかなりません。そのため,
p型の膜をどうやって作るかが世界中の研究者の目標になっていました。
一般の半導体はMg(マグネシウム)を不純物としてドーピング*2すると
p型になります。しかし,GaNはMgをドーピングしてもp型にはならず,
絶縁体になってしまいます。Mgに付いている水素がp型になることを
妨げるからです。

 それをアニール,つまり600℃前後で加熱するとp型に変わること
(アニールp型化現象)を世界で初めて発見しました。この温度で熱すると
水素が除去され,Mgの活性を取り除いてp型になるのです。

 これを発見したのは,中村氏ではありません。中村氏とともに働いていた
若手の研究員が,幸運にも偶然発見したものでした。この研究員が
アニールp型化現象を中村氏に報告しましたが,当初中村氏は
「そんなはずがない。間違っているだろう」と否定していたくらいです。

 既に青色LEDや,それを基にした白色LEDの市場には世界でざっと
50社が参入していますが,アニールの工程なくして商品化している
会社は1社もありません。世の中に全く存在しなかった技術を発明した
という意味で,アニールp型化現象の発見の方が,既に存在していた
平滑なGaNの膜を得ることよりも重要度や貢献度は高いのです。


「報奨」は11年間で6195万円

 もちろん,アニールだけではありません。ほかにも性能向上のための
技術や量産のための技術など,当社が青色LEDや白色LEDを商品化
するまでには,大勢の技術者や研究者たちの努力がありました。

 もちろん,中村氏の貢献も認めています。青色LEDを研究テーマに
選んだのは彼です。公知の技術とはいえ,当社になかったリソース
にもかかわらず,文献の助けや外部の研究者の方などに教えてもらいながら,
2年ほどで世界のトップ水準の結晶膜を日亜化学工業にもたらしたわけですから。
それで将来の量産化に向かう「たたき台」になったのは事実なのです。

 この貢献に対し,当社は中村氏にボーナスや昇給という形で
報いてきたつもりです。1989年から11年間の合計で,
同世代の一般社員よりも6195万円ほど上乗せして支給しました。
45歳で中村氏が退職する際の給与所得は2000万円弱。決して少ない
額ではないと思うのです。中村氏は404特許の発明で得た報奨は,
特許出願時と成立時の合計で2万円しかないなどと言っているようですが,
そんなことは決してありません。


量産に使えないツーフロー装置

 先ほども言いましたが,ツーフローMOCVD装置はあくまでも
サファイアの上にGaNの結晶膜を作るためのものであって,これだけでは
青色LEDにはなりません。ほかに必要な技術がたくさんあるにもかかわらず,
なぜ中村氏の貢献度(配分率)だけがあれほど高く評価されるのかが
理解できません。世間も誤解しているようですが,今回の訴訟は
青色LED全体に対する特許訴訟ではなく,その一部であるGaNの
結晶膜を作る装置の特許に関する訴訟なのです。にもかかわらず,
裁判所が算出した増分利益は,青色LED全体,いや,白色LEDまで
含めたものになってしまっています。

 しかも,実はツーフローMOCVD装置は効率が低過ぎて量産には
使えませんでした。実験室レベルの装置だったのです。そのため,
量産工程では別の方法を使ってきました。さらに言えば,ツーフロー
MOCVD装置に関する特許は,中村氏が特許申請する前に何件か出ています。
GaNを成膜するための特許もあったくらいです。

 中村氏は1994年以降,自分で実験はしていません。周囲の共同研究者の
研究成果を筆頭者(ファーストオーサー)として対外的に発表してきました。
こうした地方の会社から,日本だけでなく海外の学会でも発表してきたのです。
だからみんなから「スーパーマン」のように思われてきました。
論文の書き方も学会発表の意味も,当社の社員はよく知らなかったのです。
「自分の名前が出ているからいいか」という程度でみんな仕事をしていました。

 ここが一番の問題だったのです。地方の会社で中村氏を自由にさせて
おいたから。中村氏が筆頭者として発表したあれだけの量の論文は,
とても中村氏が自分で行った実験だけでは作成できません。

 その結果,世間が中村氏に注目し始め,いつの間にかみんなが
「404特許は青色LEDを生み出すための基本特許であって,
それは中村氏が1人で発明した」というふうに思い始めたのです。
裁判官の方はきちんと調べてくださると思っていたのですが,
やはりこの件は技術的に分かる方に評価していただかないと
判断は難しいようです。


開発中止命令など出していない

 確かに,技術者の中にはことさらに自分がやったことを強調する人もいます。
しかし中村氏の場合,そういうレベルの話ではありません。
本当に不可解なのは,あらぬうそを平気でつくことです。例えば,
法廷で彼は「社長から青色LEDの開発中止命令が2度出た」と言っています。
 誰かその証拠を見た人がいるのでしょうか。
「開発中止命令のメモが回ってきた」と中村氏は言いますが,
それを誰が見たのでしょう。裁判官も弁護士も見ていないのです。
それはそうでしょう。誰も開発中止命令など出してはいないのですから。
 事実,試験研究費や設備投資,開発要員の推移を見れば分かります(図)。
青色LEDに関する研究を始めた1989年から,試験研究費も設備投資費も
開発要員も,毎年のように増やしてきました。現実問題として,
これほどの人,モノ,カネを投じておいて,開発中止命令など
出せるでしょうか。

 東京地裁で裁判官の方は「貧弱な研究環境で個人的能力と
独創的な発想により世界的な発明を成し遂げた希有けうな事例」であると
判決時に述べました。しかし,これも納得がいきかねます。
1986年に当社は10億円を使って,研究棟を新設しました。
床面積1万m2,6階建てです。1989~1993年までにガス系統などを
含めて4億円はするMOCVD装置を5台も購入しています。
地方の企業でこれだけの研究設備をそろえていたのです。
一体,これのどこが「貧弱な研究環境」なのでしょうか。

 「貧弱な研究環境」という表現は,中村氏自身が書いた本や記事,
インタビューを受けた雑誌などに見られるものです。要は,
自分でそう表現しているだけなのです。


気が付いたら「悪者」に

 当社を訴えたことに関して,中村氏は「日亜化学工業が訴えたから反訴した」
と語っていますが,これには「裏」があります。2000年9月22日,
日亜化学工業は米Cree社から訴えられました。その4カ月以上前の
2000年5月1日,中村氏はCree社と雇用契約を結びました。そして,
それとは別に中村氏は日亜化学工業を訴えるという契約をCree社との
間で結んでいるのです*3。もちろん,中村氏はCree社からインセンティブ
(ストックオプション)を受け取ってのことですが。訴訟費用も
すべてCree社が負担するという契約でした。それを知った当社は,
2000年12月21日,Cree社を反訴するとともに中村氏を訴えたのです。

 ところがその後,当社とCree社は2002年11月14日に和解しました。
それで残ったのが,2001年8月23日に中村氏が訴えた日亜化学工業との
間の訴訟だということです。

 もちろん,当社はこうした事実を資料として裁判所に提出しました。
裁判所で真実を訴えさえすれば,私たちは公正な裁定がされると
思っていたのです。マスコミを通じて広く世間にコメントを発表する
といった発想はなく,裁判とはそういうものだと思っていました。

 中村氏は,当社で青色LEDの開発を提案した本人ということから,
世間に対して当社の青色LED関連の発表をする窓口を務めていました。
加えて,先述のようにファーストオーサーとして論文を発表してきました。
学会に訪れた研究者たちは,その内容が実は日亜化学工業の
多くの技術者たちが成し遂げたものではなく,中村氏が1人で実現した
ものだと思ってきたのです。そうした外部への発言が,彼を
「スター」に祭り上げ,いつの間にか世の中は,中村氏が発言したことを
鵜呑うのみにするようになってしまったのです。

 ものづくりは日々改善が必要で,3日もさぼればすぐに他社に追いつかれ,
追い越されてしまいます。だから,中村氏が何を言おうが,相手にせずに
ものづくりに力を入れる方を当社は選んできました。その結果,
世間からは「日亜はなんてひどい会社なんだ」などと思われてしまいました。
このままではこれまで青色LEDや白色LEDの開発に尽力してきた当社の
多くの技術者や研究者たちが,あまりにもかわいそうです。

 いったん,イメージが付くとそれをぬぐい去るのは大変かもしれません。
でも,これからは世間に対して説明し,理解してもらえるように
発言していくつもりです。(聞き手=近岡 裕)

日経ものづくり2004年4月号 特集より。

ーーーーーーーー





(株式会社 日亜化学工業は徳島県阿南市にある
 非上場の会社です。

 その後、中村氏は米国籍を取得いたしました)





中村氏の主張はこちら ↓
















中村修二氏語る
個人を報えば企業も利する
 今回の判決で,相当の対価(以下,対価)のうち請求していた200億円が満額で受け入れられました*1。対価の総額は604億円以上。確かに高額ですが,それはたまたま市場規模が大きいというだけ。重要なのは,特許の使用者である会社に対する発明者,つまり従業員の配分率です。
 判決では「少なくとも50%は下回らない」という配分率が示されました。日亜化学工業も設備投資や研究開発費,私の留学費用などを負担しているので,これだけの配分率なら満足です。
「チームワーク」は乱さない
 ただ,大変心配していることがあります。「巨額の対価の支払いは企業経営を破壊する」といった論調が産業界などに見られることです。
 確かに,前例のない「巨額の対価」です。しかし,「企業の活動はチームワークであり,発明者だけでなく,経営者や営業部門,マーケティング部門,間接部門の担当者など,数多くの人間の努力で成り立つもの。今回の判決のように,発明者ばかりが暴利をむさぼるのはけしからん」という意見は,完全な誤解です。
 なぜなら,発明の対価の対象は,あくまでも「超過利益」だから。つまり,従業員の「チームワーク」で稼ぎ出した通常の営業利益から奪い取るのではなく,対価は,その特許に対するライセンス料をベースに算定されるものだからです。
 私の場合,GaNの成膜装置である「ツーフローMOCVD(有機金属を使う化学的気相成長法)」に関する特許第2628404号(404特許)の発明は独力で行いました。つまり,発明者は私個人なのです。発明した高輝度青色LEDに対する基本特許は私が抑えており,通常実施権(自社で製造・販売する権利)を独占的に手に入れた日亜化学工業は,現在,青色LED市場で大きなシェアを占めることができています。その権利を利用することで,特許が切れる2010年10月までに日亜化学工業が獲得する増分利益を,裁判所は1208億円と計算しています。これは,日亜化学工業が権利を独占せずに競合他社にライセンスしたと仮定した場合の利益から割り出したものです。
 要は,特許を使用する権利を売ることで稼いだライセンス料に,その発明者の配分率(50%)を掛けたものが,発明者が受け取る対価となるわけです。ライセンス料は経営者や,発明者を除いた社員たちの努力といった「みんなのチームワーク」で稼ぐわけではなく,発明者が知恵を絞って個人で生み出した特許そのものが稼ぐもの。だから,発明者による対価の請求がチームワークによる利益を損なうものだという論調は間違っています。
 イチローのようなスター選手もチームの中で活躍しながら高額の年俸を手にしています。しかし,イチローに対して「野球はチームワークなのだから1人だけ突出した年俸はおかしい」などと言う人はいません。
結局は会社ももうかる
 日亜化学工業は,終身雇用の下で安定収入を得ながら,巨額の報酬を手に入れるという「2重取り」は許せないなどと言っているようです。これも争点がズレています。対価は特許のライセンス料,つまり,他社との間の特許の売買で決まるものであって,終身雇用うんぬんとは全く関係がありません。
 私が何よりも言いたいのは,そうした発明者の努力で,実は企業が潤っていることを見落とさないでほしいということです。日亜化学工業はかつて,ほぼ蛍光体だけを製造・販売する企業でした。そこに青色LEDによる新しい事業を提案したのは私です。つまり,私が発明した特許によって,日亜化学工業は50%の配分率を手にできました。
 蛍光体メーカーだったころの売上高は180億円程度で,営業利益は6億円程度でした。それが,2002年度は売上高が1800億円に達し,465億円の営業利益を計上したと聞いています。うち,半導体事業の売り上げは900億円以上。もちろん,そのすべてが青色LEDの発明のおかげとは言いませんが,日亜化学工業に相当貢献していると自負しています。私の発明で恩恵を被っているのは,日亜化学工業の方でしょう。
権利を奪えば「明日」はない
 高額の対価の支払いが企業の利益を圧縮し,企業の経営を難しくするという指摘があるのも知っています。しかし,それは成果を上げた発明者を,企業がこれまできちんと処遇してこなかったツケが回ってきただけ。ある意味,自業自得ともいえます。
 短期的にはその指摘通りのことがあるかもしれません。しかし,中・長期的に見れば,優れた発明をした従業員の貢献を認め,きちんと対価を支払うことが,技術者のモチベーションを高めて,より高い利益を生むような発明につながっていくと思います。そうすれば,企業もこれまでより多くの利益を得て発展していくことでしょう。発明者を正当に評価することが,結局は会社により一層の利益をもたらすことになる,まさにそうした好循環が生まれるのです。プラス思考でとらえるべきであって,マイナスの発想から日本の将来を支えるような画期的な技術や発明が誕生するわけがありません。
 残念なのは,現在,こうした技術者や研究者のインセンティブやモチベーションの源泉である「特許法第35条」を改正しようとする動きが特許庁などで見られることです。第35条は発明者個人に対価を保証するものですが,改正によってこの権利が実質的に失われることを危ぐしています。第35条の対価請求の権利は残しておかなければなりません。(聞き手=近岡 裕)
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by Tukasa-gumi | 2014-10-08 12:26 | 図書 | Comments(0)
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